大学がF市に移転したのは、二年程前のことである。



古いキャンパスにゐたころ、私たちの朝は、砂をぬぐふことからはじまつた。
朝登校してくると、机も椅子もうつすら砂をかぶつてゐる。
老朽化した教室のどこからか大量の砂が入り込み、夜のうちに一面に降り積もるのだつた。
鼠色の砂が掃いても掃いても掃ききれなくなつた夏、移転が決まつた。



今日、久しぶりに古い校舎に忍び込んだ。




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