水族
負け続けてもチョキばかり出すやうな南の海の金の小魚 にんまりと沈むアザラシ このごろはれんげ畠の夢をよく見る アンテナのやうな尻尾を引つ張つてエイを静かに溺れさせたし
お父さんラッコの毛皮獲つて来てよ水中をきりきりとくぐつて 胸びれの付け根の赤さ 弟も兄も密かに我を恋ふべし マンボウと唇(くち)を合はせて朝焼けの美しさなど語り合ひをり 水くらげの泳ぎを真似て恋人は白い煙を吐き出してゐる
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